研究目的



 私たちの身の回りにある金属、半導体、磁性体などの物質は磁気を帯びる、電気が流れる、超伝導を示すなど多様な性質をもつ。これらの性質は原子のなかにある電子により支配されている。本領域では、電子のもつ小さな磁石であるスピンに地磁気の100万倍以上の強い磁場を加えて電子を揺り動かし、物質の機能や状態を制御することを目指している。例えば、磁場によって電気が流れない絶縁体を電気の流れる金属に変えたり、磁場に強い超伝導体を見出したり、磁場で磁石の性質を大きく変えることを通して、物質をスピンで制御するための基礎的な原理を明らかにする。100テスラの磁場の中では、磁気のエネルギーは数百度の熱エネルギーに匹敵するほど大きくなり、物質の劇的な改変が可能になると期待されている。


研究の内容
 最近、磁場発生技術の進歩により100テスラ級の磁場が発生できるようになってきたが、このような強い磁場中で期待される物質の振る舞いをみるためには、強磁場中で物質を精密に調べる実験手法を開発する必要がある。本特定領域では、これまで不可能であった100テスラ領域におけるX線散乱や磁気共鳴、各種分光などの最先端の計測手法を世界に先駆けて開拓し、それらを用いて強磁場で誘起される様々な新しい物質の状態を解明する。強い磁場を用いることで、今まで十分見えなかった化学物質やたんぱく質の活性などのスピンを目印とした監視も可能になる。


期待される成果
 本特定領域の推進により、物質のスピン制御の基礎原理の探求が進み、20世紀に生まれた現代磁性学が、物理、化学、生物などの分野を横断するスピン科学へと進化を遂げる。その結果、21世紀の基盤技術と期待される“スピン技術”への道が切り開かれる。
[キーワード]
  100テスラ:日本付近の地磁気約5万分の1テスラの200万倍にあたる磁場
  スピン:電子の自転自由度に対応する小さな磁石、すべての電子が必ず1つもっている



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